心臓、腎臓、および脳血管系は、ファブリー病の主な標的となる器官です。数年前からはファブリー病の胃腸症状にも関心が集まっています。ファブリー病の症状はファブリー病に特有な症状ではないので、症状からすぐにファブリー病と診断するのは難しいですが、鑑別診断の中には記載しておきます。
ファブリー病の心臓、腎臓、および脳血管系の症状は、現在よく知られていますが、胃腸症状についてはそれほどよく知られていません。腹痛、下痢、嘔気および嘔吐は、患者さんの生活の質に大きな影響を及ぼします。複数の最近の研究では、こういった消化器症状に関心が向けられています。
最初の研究は、ファブリー病が胃腸症状の鑑別診断の中に記載されるべきであると示しています(1)。胃腸症状は、ファブリー病だけにみられる症状とは言えないので、診断を決定するのが難しくなり、診断エラーが起こりやすくなりますが、この研究では、酵素補充療法および経口の「シャペロン」療法を早期に開始した場合、症状が改善すると示されています。オリゴ糖、二糖類、単糖類、およびポリオール(フォドマップ)、プロバイオティクスやプレバイオティクスの少ない食品も消化器症状を改善します。
もう1つ同じテーマに関する最近の研究に、メタ分析があります。この研究では、消化器症状は1歳から4歳の間に現れ、その有病率は18%から69%であると示されています。腹部の不快感は、食事で起こることが多く、腹部全体の痛みとして現れ、患者の2人に1人が訴える最も多い症状であり、患者の10人中4人にみられる下痢、ついで便秘と続きます。嘔気、嘔吐、逆流性食道炎もよくみられます(2)。
第3の研究は、古典型ファブリー病の患者さんの消化器系の胃上皮、血管壁、および神経細胞に酵素基質の蓄積があることが確認されているという研究です。これに対して、遅発型の患者さんでは蓄積がありません。著者は、ファブリー病の消化器症状の病因において、これらの沈着がどのような役割を担うのかを正確に特定するにはさらに研究が必要であると述べています(3)。
最後に、第4の研究では、ファブリー病患者の消化器症状を評価できる新しいツール、FABPRO-GIの開発と検証が行われました(4)。
2022 FSIG Expert Fabry Conference – 2022年4月8日 - 10日 - フィラデルフィア
4. Shields AL. et coll. : FABry Disease Patient-Reported Outcome-GastroIntestinal (FABPRO-GI): A new Fabry disease-specific gastrointestinal outcomes instrument. Qual Life Res. 2021 Oct;30(10):2983-2994. doi: 10.1007/s11136-021-02847-9.